これは大学生2年生の時の某日の話。
私には妹がおり、妹とは年子なので妹は大学1年生でした。
実家の2階にあるそれぞれ自室に居た、秋口の夜8時くらいの事。
両親は、昔から共働きで帰宅も遅いです。
そして、極端に節約する家なので、両親からは『家の電気を極力点けるな』と言われていました。なので、電気を付ける時は、手元が明るくなる程度の明かりのみ。
みんなでリビングで食事をする時も、部屋の電気は点けず、テーブルを照らす明かりだけの生活でした。
テレビもありましたが、それは父親が映画やニュースを見たりする時だけ点く感じでした。
私も妹も、殆どテレビを見た事はありませんでした。
電気を点けるな。と言われていた事もあり、妹は、自室で真っ暗にして昼寝?をしていました。(もう夜でしたけど)
私は、ちょうどその日に図書館で借りた本を読んでいました。手元を明るくして。
読んでいた本のタイトルは【リング】。
私はホラーが苦手なんですが、何故かその時は、『もしかしたら読めるかも。』と借りてきたんです。
ドキドキしながら話も佳境にさしかかっていました。
誰も居ないはずの1階から
ガチャン!ガチャン!
と音がしたかと思ったら、その後は、
しーーーーん
としていました。
『早めに親が帰宅したのかな?』
その時は、リングを読み進める事を優先したため、物音を気にしつつも見に行きませんでした。
少しすると、
ドン、ドン、ドン…
階段を上ってくる音がします。男の人のような足音だったので、
『あぁ、やっぱり父親が帰ってきたのか』
と読みながらそう思いました。
ドンッ…
2階に上り切った足音がしました。
2階に上がってきた音はしたものの、一向に奥の両親の部屋に行く音がしません。
『なんか、おかしい?』
そう思った時でした。
ウーウーウーウーウー!!!
突然、1階のリビングに置いてあるはずの懐中電灯のサイレンの音が、私の部屋の前で鳴ったんです!
ちょうどリングの怖いシーンでドキドキしていた事と重なり、物凄くビックリして心臓が飛び出しそうなのと同時に、物凄い怒りを覚えました。
だから、つい大声で怒鳴っちゃったんです。
『うるせーなぁぁぁ!!!』
つい荒い言葉遣いになりました(;^ω^)
あの時、階段を上がってきたのが父親だと思い込んでいたので、どうして電気を点けているのに懐中電灯なんて持って上がって来ているのか。とも疑問にも思いませんでした。
ドンドンドンドンドンドン!!!!!
私の大声で足音は、勢いよく駆け下りていきました。
すごい勢いで階段を駆け下りた足音の後、また
しーーーーーーん
と静寂に包まれました。
カチャ…
『ねぇ。今の何の音??』
物音で目を覚ました妹が部屋に入ってきました。
急に不安になり、2人で1階に見に行く事にしました。
リビングの明かりを点けましたが誰もいなかったので、キッチンにも向かいました。
すると!
キッチンの勝手口のガラスが割られていたんです。
『えっ!!』
2人で同時に声を上げました。
つまり。
ガチャン!ガチャン!という物音は、ガラスを割る音だったんです。
そして、階段を上る足音は空き巣の足音です。
そして…
リビングにあるピアノの上に、手汗まみれの空き巣の手形がベッタリと付着していました。
もう怖くて怖くて、震えながら両親と警察に電話をしました。
家中、鑑識の方が空き巣の痕跡を採取しました。
足跡は28センチの男性の靴跡でした。
ピアノの上の手形もしっかり採取されていました。
私と妹は、警察に事情説明をしました。
結局、空き巣に盗まれたのは【赤い懐中電灯】のみでした。
警察との話で言われた事…。
●家に明かりが点いていない事で、以前から空き巣に狙われていたんだろう。と。
●家の庭や隣家との間に木々が生えていた事で、周りからの目隠しにもなる為、かなり空き巣からすると好条件だと。(母親が沢山植えてる)
●留守であっても、玄関とリビングの明かりは点けておく事。
そして、最後に。
警察
『お姉さん、大声だけ出して部屋の扉を開けなくて本当に良かったですね。勝手口を調べた所、空き巣はピックのような鋭利な物で開けたようなんですね。』
警察
『だから、お姉さんがあの時、もし扉を開けていたら、そのピックで刺されていたかもしれないんですよ。』
あの時、懐中電灯のサイレンが鳴らなかったら…。
私が怒りに任せて怒鳴りながら自室の扉を開けていたら…。
私は今ここに居なかったかもしれない…。
残念ながら、空き巣は捕まりませんでした。
貞子を見る度、この時の事が思い出されます。